☆ 6月第3週 ☆    2015/06/11 〜 06/17


 もう一度、日本国憲法を考える : その4 


毎日新聞の「憲法記念日」特集に対する私の感想を、3回にわたり記しました。
もうひとつ別件で、憲法24条をめぐる問題を整理しておきたくなりました。
というのも、私の気づいていなかった憲法24条問題が自民党で検討されているらしいからです。



   ● 24条制定の経緯

     すでに見たように、マッカーサーが示した新憲法制定の3つのポイントは、
       @ 天皇は国の元首  A 自衛権の放棄を含む戦争の放棄  B 封建制度の廃止
     でした。

     「封建制度の廃止」の中、家族(家長)制度に関するものが、24条でしょう。
     国民一人ひとりがそれぞれ個人として平等であり、尊重されるべきだという『民主主義』の原則が
     24条には明確に記されている訳です。


   ● 自民党の「家族制度」復活構想に対する学者などの警戒感

     ところが、最近、自民党では「家族の相互扶助」という発想から、24条すなわち家族の単位を
     夫婦と(狭く)定義している部分を改めるべきだという意見があるようで、人権問題などに関わる人々が、    
     その動きに警戒感を抱き、批判する意見を述べるという状況が起こっているのです。

        参考: 改憲を問う! 憲法24条を大切にしよう (法学館憲法研究所)

     そこで説かれている主張は、古い家長制度への逆戻りを許してはならないという点に限って言えば、
     至極まっとうな論で賛同できるところでしょう。

     しかし、その一点だけに着目して、『24条を改正させてはならない。 だから(気の毒だとは思うが)
     同性婚もダメ!』 と繋がっていくのであれば、それはあまりにも近視眼的な発想に堕してしまいます。


          24条については、上記のような法律専門家だけでなく、個人レベルでも、改正反対の意見が
          みられます。 自民党の改憲プロジェクトへの反論としては極めてまっとうな内容です。

             参考: http://www.h2.dion.ne.jp/~you3/seiron031.htm


          しかし、同性婚への眼差しなどはそこでも見当たりません。 この方は、護憲の理由を
          「今の憲法で不都合を感じていないからです」 と率直に述べていらっしゃいます。

          ところが、世間では「そこに不都合を感じる」事例 が現実に発生しているのです。
          憲法 24条を根拠に、青森市役所では「女性同士」の婚姻届を不受理としていたのです。

             参考: http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06-4


          改憲の是非を論じるのであれば、ご自分にとっての『不都合』 の有無だけでなく、もっともっと
          テーマと視野を広げて考察してみては ・・・ と私はこころから願っています。


   ● 憲法改正をタブー視するのはやめよう

     私の言いたいことはこれです。 憲法のどのような箇所であっても、時代の流れにしたがって、不都合
     なところが出てくれば、その都度、国民的な議論をした上で必要な改正をすることを『当然のこと』と
     考える風土を培うことが戦後70年の今、求められていると思うのです。

     憲法を明治時代のような「不磨の大典」と祀り上げるのではなく、日本という私たちの《祖国》の根幹と
     して、絶えずブラッシュアップしていくことが当然だと考える風土を、戦後70年を機に、自由闊達な議論
     の中で培っていきたいものだ・・・というのが私の真意です。 いかがでしょうか。




最近、国会で安保関連法案を巡って与野党の攻防がかしがましいのですが、
この際、日米安保条約そのものの是非を根本から議論し、国民に問い直すことを期待します。

私は 1960年安保の際には、労組の構成員として反対運動に参加した経験があります。
賛否は別にして、あの当時のように国中が熱く安保を語り合うという状況を
ぜひとも、もう一度つくり出し、わが国の安全保障についての議論を盛り上げる
体験を、とりわけ若い人々にして欲しいものだと願っています。

どちらが正しいかではなく、日本国民はどういう選択をしたいのか? を、
本気で考える絶好のチャンスだと思うからです。





プログラムで振り返るオペラ Part.3 @ : ワーグナー 「 トリスタンとイゾルデ 」



   ワーグナーの音楽は、オーケストラコンサートで聴くのは好きでしたが、オペラには馴染めない私でした。
   このブログで紹介したオペラも 『さまよえるオランダ人』 のみでした。
   他に『タンホイザー』は 1989/06 に関西二期会の創立25周年記念公演で鑑賞しているのですが、当日の
   日記には、「尼崎でタンホイザー。 コーラスが圧巻! すごい総合芸術だと思う。 若いワーグナーを
   感じさせる」と淡々とした感想を記しているだけです。

   そんな私のワーグナー観に変化を齎せてくれたのが、飯守泰次郎指揮の「関西フィル定期:ワーグナー」と     
   いう企画です。 定期演奏会で毎年一回、演奏会形式で1幕のみですが上演してくれたのです。
   ワーグナーのオペラ入門としては、格好の演奏会です。

  トリスタンとイゾルデ    2010/07/30 : 第2幕
  ワルキューレ2009/03/27 : 第1幕    2012/06/14 :  第3幕    
  ジークフリート2011/05/31 : 第1幕2014/06/13 : 第3幕

    とりわけ '10/07 の「トリスタンとイゾルデ」からは、これまで経験したことのない不思議な感動を得ました。
    その日の日記には、

       関西フィル、ワーグナーの奥深さを初めて感じる。 第3場、マルケ王に人間の苦悩・業を見る思い。

    とあります。 これまでの音楽作品や文学作品から読み取ってきた「社会の良識や善悪、高貴さと愚かさ」と
    いった概念では捉えきれない『存在の暗闇・情念』という感じの、私には未知の深淵のようなものを、そこに
    見た気がするのでした。

    この夜のプログラムには、大津「びわ湖ホール」での「トリスタンとイゾルデ」公演のちらしが折り込まれて
    おり、私は帰宅後、すぐにネットでそのチケットを購入したほどの魅入られかた ・・・ でした。

        2010/10/10

  指揮 : 沼尻竜典

  ジョン・チャールズ・ピアース
  小山由美、 松位浩、 石野重生、 加納悦子 ほか

  大阪センチュリー管弦楽団

   大津での公演当日の日記には、

      まずオーケストラの響きが芳醇で、力みもなく最高に Good !
      ステージの機能の活かし方、舞台装置のデザインも実に好ましい。
      ワーグナーの意図を、やっと納得する。 最高の舞台公演だった。

   と記してあります。 また、当日のアンケート回答には、次のように記入しておきました

      このすばらしい公演を企画・実施なさったホールの皆様に、まずは感謝申し上げます。
      私はオペラ好きですが、なぜかワーグナーだけは苦手にしておりました。
      今年7月の関西フィル定期で、演奏会形式での「トリスタン」第2幕で大変感銘をうけ、
      本日の鑑賞にいたったという次第です。

      これまでのワーグナーの印象は、やたらにオーケストラが饒舌で、オペラらしくないというのが
      私のワーグナー嫌いの一因でしたが、本公演での沼尻先生の指揮・大阪センチュリーの演奏
      には、そういう気配がまったくなく、ホールの音響的特性と相まって実にやわらかな・しかも
      芳醇な響きを聴かせてくれました。
      ワーグナーの作品が単なる歌の楽しさを名人芸的に聴かせるものではない、ステージ上の
      諸要素とオーケストラとの総合的な作品だということが、この齢になってやっと納得できました。

      ケムニッツ歌劇場の舞台を持ち込んでの公演だったそうですが、舞台の構成・照明が実に魅力的
      でした。 とりわけ第2幕の舞台装置の使い方が「オペラホール」ならではの工夫がいっぱいで、
      実にこころ躍るものでした。
      ステージの広さと様々な装置を駆使した公演は、これまで体験したことのない魅力でした。

   この公演の録画は、後日、NHKテレビで放映され、私もビデオに収めてあります。
   私にとっての、オペラ公演ベスト3 は『イタリアオペラ公演:オテロ』、『ベルリン・ドイツオペラ公演:
   ヴォツェク』 と本公演です。 もうこれほどの感動は持ちえないように思えます。





今週のちょっと
ほっこり  
  新聞の川柳欄には、なかなか的を射た作品が見られますね。


  ・ 次の世は 互いに好きな 道行こや    大 阪:つぼさんご

  ・ クスリ今 飲んだ声出し 言い聞かせ   鹿児島:田中健一郎

  ・ 何しても あと何回と  思う歳       奈 良:鹿せんべ


  いずれも最近の毎日新聞(朝刊)掲載のものでした。



    Top Page へ戻る     6月第2週へ     6月第4週へ