☆ 10月第1週 ☆    2015/10/01 〜 10/07


 思い込み : キリスト教とはどんなもの?


 先週のページの最後に取り上げた、「今週の面白〜い」。 いかがだったでしょうか?

 ああいう設問があると、人はついつい 「目の前の事柄」 とは別の 『正解』 を求めて
 いろいろと思いを巡らせる傾向があります。

 人間の持つこうした「傾向」を踏まえて、宗教を考えてみようと思います。



  ・ 「キリスト教」 その3つの要素

   私がカトリックに出会ったのは、敗戦後間もない 1946 年でした。 近くの知らないお宅で
   『幻燈』 (今風にいえば、スライドショー?)でマンガが見られるという友人の話に誘われ、    
   そのお宅に行ったのでした。 集まってきたのは近所の顔見知りの友達ばかり。

   イタリア人の神父が来ていましたが、『幻燈』 のマンガや、聖書の物語のナレーションは
   そのお宅のご主人(カトリック信者)が、面白おかしく聞かせてくれたのでした。

   こういう出会いがきっかけで、私は教会に足を運ぶことになったのですが、そうした友人
   の中で、カトリック信者になったのは二人ほどでした。

   カトリックの勉強(?)をする中で、3つの要素ないし側面があることに気づきました。

      第1は、いわゆる 「教義 : 信ずべきことがら」、第2は 「戒律 : 守るべきことがら」、
      第3は、「秘跡 : 神の恵みをいただく方法」≒「宗教儀式ないし祈り」。

   一般的に、キリスト教という言葉を聞いて、日本人がイメージするのは、「教会堂」とか
   そこで日曜日などに行われる「ミサ」 (プロテスタント教会であれば、日曜礼拝)、そして
   「聖書」や「讃美歌」といった事柄ではないでしょうか?

      いわゆるキリスト教国では、こどもの頃から、そういう形で教会・キリスト教に馴染んで
       いくわけですから、それ自体は不自然なことではありませんが ・・・


   つまり、先ほどの3つの側面のうち、おおむね第3の「宗教儀式ないし祈り」という部分、
   日曜日を中心にイメージされる 『教会での礼拝ないし儀式』 です。

   実際、「日曜日に、一度、教会に行ってみたいのだが・・・」 という知人が稀にいます。
   私は、あまり積極的に勧めることはしません。 宗教的儀式は、馴染みのない方には
   意味の分かりにくいもので、多くの場合、「なんのこっちゃ・・・」 という結果に終わって
   しまうことが懸念されるからです。

      ミサ中の立ったり座ったりの所作、聖体拝領の際の信者と未信者の対応の違いなど、
       初めての参加者には当惑の連続 ・・・ という印象が強いことと思います。

       加えて、一般的にカトリックの神父の(ミサ中の)説教はそれほど感銘を受けるほどの
       ものではなく、実にありきたりの内容でがっかりするケースが多いのです。 (^_^);
       いっそ、説教の上手な神父の話を、ネットなりで配信した方がよほどマシでしょう。


   こういう私の見解に同意なさらない信者さんクリスチャンも多いと思います。 しかし、私の信仰的
   感覚・感性からいえば、キリスト教との出会いを、儀式(カトリックでは 「典礼」 と呼んで
   います)から始めるのはどうかな? という思いがしてならないのです。

   この第3の側面は、すでにキリスト教に入信したクリスチャンの、日常的な信仰生活の
   パターンとして(例えていえば、メトロノームのような)意味を持つもの ・・・ というのが、
   私の理解です。

      例外的に、病気などで非常にこころを痛めていらっしゃる場合などでは、キリスト者が
       その方に寄り添い
、ただひたすらに祈る(それも単純な祈り、例えば Ave Maria ・・・ など)
       という方法が好ましいケースのあることは、私も経験的によく知っているところです。

       これは、心と体を慰め・癒す「祈り」のスタイルとして、とても意味深いものです。



  


  ・ 窮屈な戒律尊重主義

   キリスト教に親しむ中で、一番当惑したのは、第2の側面 : すなわち毎日の生活の中
   での禁忌事項があまりにも多く、しかも厳しいことでした。

   まず 「十戒」 と呼ばれるもの。 キリスト教の神のみを礼拝し、異教の神仏の礼拝を
   禁じるのは当然として、「父母を敬え」 「姦淫するな」 「盗むな」 「偽証するな」 といった
   道徳的なテーマが事細かに規定されており、若い人々にとってはとりわけ「性」に関する
   禁忌事項が厳しい ・・・ というのが、とても強く印象づけられたのでした。

      ヘルマン・ヘッセの小説 「車輪の下」 では、そういうキリスト教社会の重荷に苦しむ
       若い主人公が描かれており、私も大いに共鳴を覚えたものです。


   それにも増して厳しく ・ 事細かなのは、「教会の6つの掟」というものです。
   日曜日にはミサに参加しろ、遅刻は「奉献」という部分より前なら「小罪」だが、
   それ以降なら「大罪」・・・ すなわち地獄行き! 「告解」(懺悔)が必要。

   年に一度は「告解」「聖体拝領」をすべし。

   定められた日には「大斎」(断食)、金曜日には「小斎」(鳥獣の肉食を禁じる)を守れ。

      小斎に関しては、食した鳥獣肉の量が 60g 未満なら「小罪」、60g 以上なら「大罪」という
       説明までありました。 また「クジラ」は鳥獣か? 魚か? という議論が真面目になされて
       いたのでした。


   キリスト教に関心を示した人々に、いきなり、キリスト教のこういう側面を説明する
   というのも、これまた全く的外れなことでしかないのです。




   以上のようなことから、初めてキリスト教に関心を持った方には、信仰の第2・第3の
   側面ではなく、第1の側面、すなわちキリスト教の教義(信仰告白の内容)を説明して
   いくことが適当だと考えます。


   カトリックでは、以前は 「公教要理」 というコンパクトな 「入門書」 があり、私もそれで
   キリスト教を学んだのですが、1960年代の 「第2バチカン公会議」 以降は、そういう
   ツールが尊重されなくなり、現時点、多くの神父は 「聖書勉強会」 的なもので、それを
   補っていることが多いようです。

      私の印象としては、聖書をいきなり読み始めるのは、多くの日本人にとっては、かなり
       「違和感」があると思います。
       聖書独特の言い回し、福音書相互間での記述の食い違いなど、当惑の素材がいっぱい!
       あるいはパウロ書簡での「現代的感覚からはあまりにもかけ離れ過ぎた記述」(例えば、
       I テモテ 2章 11節以下など)によって、聖書への違和感を増幅させることが心配される
       からです。



   先週の 「2枚の硬貨で 150円」 の問題を思い出してください。
   あそこには、2枚の硬貨の写真が提示されていました。
   これが実に「曲者」でした。 このような問題設定において、こういう写真がいきなり
   提示されていると、人々は、この写真とは異なる「組み合わせ」が、正解なのだ ・・・ と
   (勝手に)思い込んでしまうものです。

   この問題提示部分には、こういうトリックが組み込まれていることを、すぐに見抜く
   人は、少ないだろうと思います。 写真の提示で、読む人をまんまと別のイメージの
   世界に誘い込んでいる点が、この出題者のすごい「悪知恵?」 or 「悪戯心」です。

   次に、『その内 一方が 50円玉でないとすると 』 という ≪言い方≫ で、人々を妙に
   混乱に誘導しています。
   もし、この表現が 『その内 一方が 50円玉だとすると 』 となっていれば、これは誰の
   目にも迷いなく正解を認識させることでしょう。

   つまり、物は言いよう であり、視覚はしばしば騙される という重大な事実ポイントが、
   あの出題には組み込まれていたということです。

   キリスト教との出会いをどう「演出」するか ・・・ というテーマにおいても、上手な方法と、
   下手なまずい方法とがあるということ。
   先週紹介したあの事例から、私はそれを強く認識させられたのでした。







今週のリメンバー    私は参加しなかったのですが、9月に熊本で
同窓会がありました。 1951年に同期入社した
仲間たちの 《最後の》 同窓会でした。
その記念冊子を頂戴して当時を思い出しました。
全員が中学卒業で採用され、今年傘寿を迎えた
面々です。

総員 180名、 当日の参加者は 35名。
109名が名簿登録されており、物故者は 55名、
連絡のとれない方が 16名となっています。
1/3 程の方が亡くなっており、健康上の理由で
参加を見送った方も多かったことから、80歳と
いう年齢の平均像が伺えます。

親許を離れ、全員が木造の寄宿舎住まい。
空腹を抱えて『トン・ツー有線通信』の訓練に明け暮れた
少年・少女が、こうして傘寿を迎えたのですから、
有難いことではあります。
当時の研修所の土地も売却され、スーパー・
マーケットの建設が進行中の由。
老兵は消えいくのみ ・・・ という感じです。
  



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