教皇フランシスコ


本来なら、ここのタイトルは、「教皇フランシスコへの期待」とすべきかと思います。
しかし、現時点、私はそこまで言い切れない気持ちですので、それはしばらく保留します。
最近の新聞などの情報によると、教皇フランシスコは、これまでの教皇とはかなり違った
現代的課題に対する対応をなさっているようで、注意深くその言動に関心を持ち続けたいと
思っているところです。


     第一の話題は、同性愛に関する教皇の発言です。

     ◎バチカンが同性愛者にも配慮促す文書

     【CJC=東京】  バチカン(ローマ教皇庁)は6月26日、同性愛者のカップ
     ルにも教会が配慮するよう促す文書を発表した。今年10月5〜19日に「家族」
     をテーマにバチカンで開かれる世界代表司教会議(シノドス)臨時総会に備えた
     もの。各国司教協議会に求めたアンケートの回答を受けて作成した。
     臨時総会は「福音宣教との関連から見た家庭の司牧的問題」を協議するための
     ものだが、今回の準備文書は、同性婚については「男女による結婚の再定義には
     反対」としながらも「過激な対応」を戒めている。同性婚が認められている国で
     は「多くの信徒が同性婚者に対して偏った態度を取るべきではないと考えている」
     と記している。
     さらに同性愛者のカップルが養子を取ることには反対を表明したものの、教会
     からの回答のほとんどが「同性愛者カップルが子どもの洗礼を求めた場合には、
     他の子どもと同様の配慮を受けるべきだ」と主張している。
     教皇フランシスコは、同性婚を認めないカトリックの教義を維持しつつ、同性
     愛者差別には反対する立場。
今回の文書は、同性婚を法律的に認める国が増えて    
     いる現状を踏まえ、同性愛者を排除しない姿勢を示したと言える。

        世界キリスト教情報 第1223信 2014/6/30


   私は、かなり以前から性の多様性に関して、伝統的な理解・解釈をすべきではないと考えて
   いるのですが、キリスト者のメーリングリスト上などで、その発言が激しく非難され、うんざり
   させられてきました。
   自分のセクシャリティをどう認識・受け取るかは、決してその人の我儘とか罪深さというべきでは
   ないと訴えるのですが、熱心さを主張するキリスト者ほど、それに拒否反応を示し、私に異端者
   のレッテルを貼りたがっています。

   彼らの言い分は、「聖書に、<神は人をおつくりになった。男と女とにおつくりになった>と書いて
   ある。」また「人が両親のもとを離れて妻と結ばれ、二人が一体となる」と書いてある。
   また、パウロが、第一コリント書で、
      6: 9 正しくない者が神の国を受け継げないことを、知らないのですか。
         思い違いをしてはいけない。みだらな者、偶像を礼拝する者、姦通する者、男娼、男色を
         する者、
      6:10 泥棒、強欲な者、酒におぼれる者、人を悪く言う者、人の物を奪う者は、決して神の国を
         受け継ぐことができません。
   と書いてあるではないか・・・ということです。

   聖書が、書かれた当時の人々の(科学的な)知識や道徳観をベースにした記述になっているのは
   当然のことで、その記述をそのまま「真理」として後生大事に信じ込むなど、愚かなことです。

   カトリック教会の中で、同性愛者を差別すべきではないという発言が聞かれたのは、初めての
   ことでしょう。
   かつて、映画「司祭」では、同性愛者の司祭が登場していましたが、彼は、性的交渉をもった相手が
   聖体拝領の場面に姿を見せた時、固まってしまい、いたたまれなくなった男は、逃げるように聖堂を
   あとにするという場面がありました。 このケースは、突然のことで心理的に混乱したためだとは
   思いますが、ことほど左様に、教会の中では、同性愛が忌まわしいものとして排斥され続けて来た
   のです。

   今回の報道が、教会内にどれだけの変革をもたらすかは、まだ霧の中・・・ですが、教皇の発言と
   してはおそらく初めてのものだと思います。
   そのきっかけが、キリスト教の普及した国々での法整備などというのも、興味深いことで、こういう
   方向性こそが、第二バチカン公会議の掲げた「教会の現代化」の道だと思うのです。

   引き続き、注目して行きたいと思います。

   参考:   *パウロさんへの手紙G へのリンク


   

     第二の話題は、聖職者による児童への性的虐待に関するもの。

     ◎駐ドミニカ教皇庁大使に性的虐待で厳重処分

     【CJC=東京】  バチカン(ローマ教皇庁)は6月27日、ジョゼフ・ベゾロブスキ
     元駐ドミニカ共和国大使(65、大司教)を児童性的虐待に関する罪で有罪とし、
     聖職者の地位を剥奪したと発表した。教皇フランシスコは、聖職者の児童性的虐待を    
     深刻に受け止めており、今回の処分となったと見られる。
     ベゼロブスキ元大使は在任中の2008年以降、任地で複数の少年に性的虐待を
     加えたとされる。13年8月、問題を把握したバチカンが召還し、取り調べていた。

     ◎児童虐待でバチカンが聖職者848人の資格剥奪

     【CJC=東京】  バチカン(ローマ教皇庁)は5月6日、聖職者による児童への
     性的虐待問題で、2004年以来、約3400件の事件を認定、聖職者848人の
     資格を剥奪したことを明らかにした。
     ジュネーブで開かれた国連の拷問禁止委員会の調査会で公表したもので、このほか
     2572人が何らかの処分を受けたという。
     児童虐待問題は、欧米などで09年前後に相次いで明らかになった。被害者団体は、
     バチカンが問題を隠してきたと批判する。
     国連子どもの権利委員会はこの2月5日、バチカンの対応が不十分だと非難する
     報告書を発表した。報告書によれば被害に遭った児童は全世界で「数万人」に
     上るという。バチカンは子どもの権利条約の締約国。
     報告書のなかで同委員会は、バチカンが犯罪の規模の大きさを認識していない
     ことや、子どもへの性的虐待や子どもの保護への対応に必要な措置を採らないこと、
     加害者を別の教区に異動させるなどして事件の隠ぺいを図ったことなどを指摘、
     「子どもにとっての最善よりも教会の名声と加害者の保護を優先した」と非難した。
     バチカンは、2011〜12年に児童への性的虐待が原因で400人近い聖職者が
     自主的に聖職を放棄したり、解任されたりしたことを認めた、と今年1月報じられ
     たが、今回発表された資格剥奪聖職者数はその2倍以上になっている。


   このような話題が、新聞などで報じられるようになったところに、新しい教皇の姿勢が
   垣間見える思いがします。



     第3は、教皇の退位に関する発言。

     【CJC=東京】  AFP通信によると、教皇フランシスコは6月13日、
     スペイン・バルセロナの地元紙ラ・バンガルディアのインタビューに応じ、
     前教皇ベネディクト16世と同様、自身も退位の時期については「神に助言を
     乞う」考えであることを明らかにした。AFP通信が報じた。
     教皇は「寿命が延び、われわれは物事をそれまで通りにやっていけなくなる年齢      
     まで生きるようになった」と語り、前教皇ベネディクト16世の生前退位について、
     「偉大な行動」だったと述べた。ベネディクト16世は昨2013年、中世以降で
     初めて自らの意思によって生前退位し、名誉教皇となった。
     教皇は、「わたしも前教皇にならうつもりだ。その時がいつ来るのかお示しになり、
     どう行動すべきか教えて下さるよう神に祈る。神は必ず、それらを知らせてくれる
     だろう」と述べた。


   私は、ベネディクト16世の生前退位には疑問を呈する立場(思い通りに事が進まないこと
   からの職務放棄と理解)ですが、フランシスコ教皇の指摘するように、「寿命が延び、
   物事をそれまで通りにやっていけなくなる年齢」という観点からであれば、同意できます。
   それぞれの教皇が「神の教え」を個別に乞うよりは、バチカンなりのルール作りをした上で
   制度化なさるのが妥当ではないでしょうか。

教皇フランシスコが、教会の現代化という路線をしっかりと推進なさることを、期待してやみません。

2014/7/10

トップ・ページへ